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最期〜私を待ってくれていた母

危篤の日から3ヶ月が経ち、新年を迎えることができました。 母の容態は良くもならず、悪くもならず、平行線を保っています。 意識が戻らないまま、苦しいでしょうに、何が母を生かし続けているのか分かりません。

そしてついに、母の誕生日が訪れました。76歳です。高齢化社会の今では、まだまだ若い年齢ですが、 あの大病を乗り越えて20年も生きてこれたのですから、大したもんです。

ちょうど妹が見舞いに行く日だったので、ちゃんと祝ってあげるよう伝言しました。 すると、その日の昼過ぎ、病院から連絡があったのです。 母の容態が急変したと。。

「妹が行ってるはずですが。」と伝えると、先ほど病院を出たと言うので、 急いで携帯に連絡を入れ、すぐ戻るように指示します。 私も急いで自転車を飛ばしました。

病院に着くと父と妹が母の側にいました。主治医によると、腎臓の機能が急激に低下し始めているとのこと。 もし機能が停止すれば、数時間以内に多機能不全になりますと説明がありました。

ついに来る日が来ました。既に覚悟はできていたので、動揺はしませんでしたが、 やはりこみ上げるものがありました。最期は、私が付き添おうと思い、準備のため妹に任せて一旦自宅に戻りました。

自宅に到着し、着替えとかいろいろ用意していると、妹からの電話です。 「お兄ちゃん。お母ちゃんの腎臓の機能が止まったらしい。もう数時間も持てへんねんて。 延命措置どうする?って聞いてはるねんけど。。」 私は答えました。「もうせんでええ。」

そして私は、自転車で猛ダッシュしました。「俺が着くまで死ぬなよ。生きとけよ。」 「神様。どうか母が息を引き取る前に会わせてください!」 頭の中でこんなことを叫びながら、ひたすらペダルをこいでいました。 あとで気付いたのですが、いつもなら30分掛かる道のりを20分余りで走り抜いたようです。

そして、母のいるフロアに着きました。詰所から看護師さんらが「着いた!着いた!」と叫んでいます。 病室に入ると父と妹が母の手を握っています。母は私のことを待ってくれていました。 途中、何度か危なかったそうですが、父が必死で「もうすぐ来るから頑張れ!」と声を掛けてくれていたそうです。

母の顔は既にうっ血していましたが、穏やかな表情でした。まだ温もりがあります。 私は、ほお擦りして言いました。 「俺を待っててくれたんか。ありがとう。よう頑張ったなあ。もう楽になってええねんで。」 その直後、モニター心電図の心拍数が一気に下がり0になったのです。

主治医が臨終の確認をしようと母の傍に来ました。父が叫びます。 「お母ちゃん、何で先逝くんや。まだ逝かんといてくれ。」母の手を握り大きな声で叫びます。 すると突然、心電図が動き始めたのです。それも凄い勢いで。 それはわずか数十秒のことでしたが、母は最後まで力強く生き抜く姿を見せてくれました。

午後8時03分、母は静かに息を引き取りました。76歳の誕生日でした。
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